1996.12.18(水)
8時前に目が覚める。シャワーを浴びる。朝だから期待していなかったけど、温かいシャワーが出た。朝から快調なシャワーで、気持ち良い朝を迎えることができた。テレビも工夫すれば映るようになったし。部屋はぼろいけど、賑やかでさっぱりとした朝。部屋にテレビがあるって、今までなかったからいい!単純に部屋が明るくなる。
今日はミラノをもう一度歩き回ろう!ドゥオーモ、ガッレリアのヴィットーリオ・エマヌエーレ2世通り。今回の旅後半に備えて、両替も済ませよう。
(午前9時15分、ホテルにて)
ホテルをチェックアウトし、荷物を置いてもらい、昼間ミラノを歩こうと思ったけど、受付の人の対応があんまり良くなかったので、もうミラノ散策はやめて、このままヴェネツィアへ向かおうと決めた。
駅内のバールで朝食を済ませ、電車を選ぶ。11:05、ヴェネツィア行きに決定。
ミラノは綺麗だし夜景もきれいで良いところだと思うけど、選んだホテルが良くなかった。良い印象が残らなかった。残念。泊まるときは、値段も大事だけど、受付の人の対応でホテルの雰囲気を感じ取り、そこに妥協しちゃダメだな、と思った。
全然列車のホーム番号が表示されない。遅れているのだろう。他に日本人も同じ電車を待っているらしい。ようやく11:35に出発する。イタリア人と相席させてもらう。
よくしゃべる人だった。日本とアメリカに仕事で行ったことがあるらしい。その人と、僕の好きな個室列車で、貸し切り状態!いざ、ヴェネツィアへ!
(11:40、列車にて)
途中、日本人が入ってきた。彼女たちは1年短期留学中で、最後の休みにヨーロッパ旅行をしているらしい。が、あまり会話は弾まない。
何か物足りないな、と思っていたら――!!
ジャケットをミラノに忘れてきたことを思い出した。
これか!しまった。どうしよう……。
ヴェネツィアに着いたら、ホテルを決めてミラノに戻ろう。
ヴェネツィアに着いた。でかい駅、街だなあ。川を渡ると島がある。ヴェネツィアは、この旅で知り合った人が全員「良かった!」って言ってた場所。なんか良さそうな予感。
でも僕は、ホテルを決めてミラノへ戻らないといけない。
駅近く、1件目 90,000リラ。高い。「ヴォレイ・スコント!」「ノン!」
2件目……なるべくぼろそうなところ(ミラノの件を学習していない)。45,000リラ。まあ、こんなものかな。3泊お願いした。
チェックインして、受付の彼女に事情を説明し、ミラノのホテルに電話してもらった。レシートを見せて……電話番号を探してもらって……忘れ物を伝えたこと、忘れ物の特徴を伝えて……電話してもらう。
そしたら、ジャケットはミラノのホテルにまだあった!よかった!
ぐっと疲れが来る。電話してくれた彼女と、頑張った自分に「お疲れ様!」と言いたい。
すぐに戻る電車に乗る。15:45 ヴェネツィア発 → 18:45 ミラノ着。
何とか席に座れて、落ち着いたから日記を書く。まだちょっとしかヴェネツィアを見ていないけど、良いところだったなあ。
(15:29、列車内)

ヴェネツィア行きの電車で話した彼女たちが、8月にロンドン旅行に行った時、友達が行方不明になったって言っていた。え?フィレンツェで聞いたやつじゃん。フィッティングルームに入った友達を待っていたけど出てこない。遅いから開けたら、誰もいなかったって。日本人行方不明事件があったという。人さらい、怖い話だ。
外国では日本人が被害に遭う事件が、バックパッカーの間で騒がれているからか、意外と多いんじゃないかと思った。日本でニュースに取り上げられていないだけで、結構な頻度で被害に遭っているのかも、と思った。
……さっきまで黙っていたイタリア人男女が、何かをきっかけに話し始め、ものすごく盛り上がっている。男性だけが話すだけでなく、女性も同じ以上に話している。お互いに話しているから、内容はわからないけど、すごく盛り上がっている。楽しそう!
女性は高そうなおしゃれ着で、一見話しづらそうな、つっけんどんなイメージだった。けど、二人は打ち解け合い、仲良くなっている。やっぱり、電車って出会いの場だな、イタリア人は。
耳を澄ますと、他の部屋からも話し声が聞こえる。話すのが大好きな国なのだろうか。個室ごとに、めちゃくちゃ盛り上がっている。廊下を歩いていると、各部屋が盛り上がっているのがわかる。全く知らなかった人同士のはずなのに。
知らない人と話をするのを楽しみに、列車に乗る人もいるんだろうな。列車を楽しむ文化がすごく良いなと思う。格好良い国。
やっとミラノに着いた。往復6時間。長いよー。ここまでしてジャケット、要る?いや、正直そんな価値はなかったかもしれない。ミラノについて初めてそう思った。ヴェネツィアでそれを自問していれば……。でも、後悔しないように、今この瞬間のことだけに集中しよう。
(18:42、これからホームに降ります)
ホテルでジャケットを受け取り、急いでミラノ駅へ戻る。
今19:20。次のヴェネツィア行きは……21:00発。2時間弱あるよー。
駅のセルフサービスのご飯屋さんで、晩御飯を食べる。ラザニアとチキン 13,500リラ。肉、人参、グリンピース。久しぶりに栄養をとった。ここは、マクドナルドみたいに時間をつぶせる良いところ。料理もかなり美味い。
でも、次にイタリアへ来るときは、お金を持って美味しいものをたくさん食べたいな。ちゃんとしたレストランで。
(20:00、ミラノ駅)
外国人が話しかけてきた。「Can you speak English?」「A little.」と答えたら、「じゃあいいわ」という顔をされた。
納得できず、「What’s the matter?」と聞くと、ユースホステルを探しているみたい。そんなことなら、俺に聞いてよ!
「地球の歩き方」を開いて、自慢げに場所を教えてあげる。彼はローマに留学中のアメリカ人。ローマの市内観光バスがおすすめだよ、と教えてくれた。よかった、彼と打ち解けることができた。
そしたら次は、隣のイタリア人女性が話しかけてきた。バッグを見ていてくれないか、って。え?外人の俺にそれ頼む?「OKですよ。俺が見守っているから。」イタリア人はスリが多いですからね。
でも、もう一回、外人の俺が一番怪しく見えないの?
暗くなるとやっぱり冷える。寒い。電車!早く来てくれ。まだホーム番号も決まっていないみたいで、発表されない。もうあと2分で予定時間ですよ。
(20:58、ホームにて)
よし、ホーム13番に決まった。禁煙部屋を確保。たぶん、日本人部屋には誰も入ってこないだろう。やった!個室貸し切りかな?
10分経っても発車しない。まあいいか。あとはヴェネツィア終点に帰るだけだから。
シートを倒してずっと寝ていた。ベッド状態で。気づいたら列車は止まっていた。12時前後。慌てて外へ出た。車掌さんは起こしてくれないんだよな。
夜0:30にホテルの部屋に戻った。あれ?こんなに狭かったっけ?まあいいか。今日は一日中電車移動で、疲れちゃった。
シャワーを浴びて寝よう。
(夜中1:30、ホテルにて)
―― 旅する読書人より 2026.7.25
往復6時間かけて、ジャケットを取り戻す。その判断が正しかったのかどうかは、本人も「正直そんな価値はなかったかもしれない」と認めている。
けれど、その過程で彼は、ヴェネツィアの街を少しだけ見て、電車の中でイタリア人の会話に耳を傾け、外国人に道を教え、見知らぬ女性にバッグを見守るよう頼まれる。ジャケットを取り戻すという目的があったからこそ、彼はその一日をこうして濃密に過ごしたのだろう。
目的が何であれ、動き続けることが旅を豊かにする。
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