1996.12.11 (水) その②
(現在夕方。ローマのホテルをチェックアウトし、夜行列車に乗ってシチリア島へ向かう。外国の夜行列車を前に心を整え中、ローマ・テルミニ駅広場前のマクドナルドにて。)

イタリアのマックで時間を潰していたら、トイレに行きたくなった。広いマックの中でトイレを探す。矢印にしたがって進む。マックを出て、隣のカフェエリアも抜けて、さらにそこも出て、地下へ続く矢印。料金所の向こうにトイレが見える。トイレへ向かおうとすると、止められた。
「お金かかるの? How much?」
「500リラ!」 えええ!
天下のマックでトイレが有料?しかし、我慢できる状態ではない。1,000リラをさっと払い、お釣りを待つ。そしたらオヤジは、500リラをゆっくりと俺に渡してくる。「早くしてよー」、汚い小銭に、汚いトイレ。こんな忘れられない、忘れたい思い出ができてしまったことに、ただただ残念。
マックのセットメニューはここが一番安いんだけどね。1,000円くらいでずっといられる場所。広いし。1,000円は高いけど、それにトイレは汚くて有料だけど、結局頼ってしまう場所。
トイレも済ませて、再びマックでこの日記を書いている。すると、兵隊さんが次から次へとやってきた。どこの国の人かはわからないけど、アーミー迷彩服。駅にもたくさんいる。どんな人たちなんだろう?徴兵制がまだあるのだろうか、イタリアは……。
彼らも祖国へ帰ってきたのだろうか。年末休暇に。ごつい棒を腰にぶら下げ、ブーツの中にズボンの裾を入れ、スーツ、シャツ、ネクタイまでが、つまりぜーんぶグリーンのアーミーカラー。すごく重々しい雰囲気を醸し出している。なのに、彼らはめっちゃ美味しそうにマックバーガーを食べる。言葉はいらない。謹んでいるのか、話すことがないのか。
それか、「NO McDO, NO LIFE IN ROMA」 。
それとも、この3人はこのマックを食べている時でも周りに注意を払っているのだろうか。有事に備えて。上着は脱いで、寛いでいるように見えるけど、そういえば言われてみれば、足はテーブルからはみ出した場所に置き、いざというときに備えているのではないか。なんて考えながら時間を過ごす。
暇潰しを始めて2時間。電車までの時間が残り3時間を切った。さあ、俺も戦闘態勢に入りましょう。いざ、シチリアへ。
そういえば、最近の2、3日、夢を見なかった。というか、印象に残る夢を見ていないことに気づく。ローマ、イタリアに慣れてぐっすり眠れるようになったのか。それとも、ただただ疲れているだけなのか……。
夜行で俺はシラクーサへ行く。ここは「全てのギリシャ都市の中で最も大きく美しい」と称えられた街。アルキメデスが生まれたとされる場所。アテネのような民主主義は育たず、大繁栄!ということにはならなかったらしい。
出発までの残り時間……約2時間。
……待合室で2時間ほど時間を潰す。
……ひたすら『オズの魔法使い』を読む。
夜行に備えて、スーパーでコーラとパンを買った。今日はヴァチカンで切手(1,250リラ×3枚=3,750リラ)。
昼は駅のピッツァ 4,200リラ。夕食はマックのビックバーガーセット 8,900リラ。夜食にパンとコーラ 2,400リラ。合計 19,250リラ。ギリギリ、一日の節約目標20,000リラ以内。やっぱりマックが高い。頑張れ、俺。
出発までの残り時間……あとわずか。
いざ! シチリア島へ ……つづく。
―― 旅する読書人より 2026.7.24
「天下のマックでトイレが有料?」
その驚きが、なんだか可笑しい。イタリアのマクドナルドは、彼にとって最後の砦だったのだろう。
それにしても、軍人たちがマックバーガーを食べる姿をじっと観察している。彼もなかなか暇人だ。いや、それだけ旅に余裕が出てきた証拠かもしれない。
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