29.思い出のアップデートが人生を豊かにしてくれる事に気付いた瞬間。

1996年イタリア一人旅

皆さんは旅行に出かけるとき、本を持っていきますか
私は、旅行にはもっていきません。
しかし旅をしたいと思ったときは、本を選びます。
どんな本を持っていこうかと
じっくり、ゆっくり考える時間も好きです。

このイタリア旅行に選んだ本は、今思うと本棚にあった未読本を
いくつか詰めただけ。
当時その本を選んだ理由は、特にありませんでした。

最近、どんな本を片手に”旅”に出かけましたか?
これからどんな本を持って、
大好きな旅へ出かけようと思っていますか?

今回の話も特に中身はありません。
この旅行に持って行った本の話を少しします。
結果的に持って行った本が、偶然だったとしても、
20年以上たった今も、良い選択だったと思っています。

なぜなら今も
私の本棚に日焼けした同じ本が並んでいるから。


1996/12/12~14 シチリア島にて

(日記からところどころ抜粋)

今車窓から海を眺めながら本を開いた。
イタリアに入って、初めて本を開いた。せっかく持ってきたのだからと
たっぷりある電車の中で、持ってきた本を思い出して読み始めたのである。

冒頭はこうである。
>・・・・歌島は人口千四百、周囲一里に充たない小島である。

そして、伊勢湾、三河湾の眺めがいかに綺麗かの描写から始まります。

僕はこのシチリア島を走る列車の中で、三島由紀夫の潮騒を読み始めた。

冒頭で、知っている場所が舞台となっていることが分かって嬉しかった。

寂しい一人旅にそっと仲間を見つけた気分になれた。
舞台となる神島は、伊良湖と鳥羽を結ぶフェリーがそばを通る。
アナウンスで神島通過の知らせがあると、よく甲板に出て眺めていたのを
思い出す。

新治と初江の出会いの場所、伊良湖の3階建ては
昔は地元で有名な心霊スポットで、子供たちに恐れらえている場所。

そう、昔少し過ごしたことがあった場所が舞台となっていた。

無駄に眺めていた海辺の景色に、ぱっと物語の世界と重なって
ひとつひとつ意味のあるような世界に変わっていく景色。。。。

なんて、
大げさなことは全く思わないけど、、、、
けど、のんびり一人旅に、ワクワク!が一つ増えたことは
単純に楽しい!
さて、これからどんな展開になるのやら。
でも、三島由紀夫の小説って、意外と読みやすかった
それも驚いた。

(つづく)

2021/7/某日

僕は、三島由紀夫のファンでもなければ、崇拝者でもない。
「潮騒」に書いてあること以外は何も知しらない。
だから
そもそも「潮騒」をどんな思いで書いたのか?に興味をもって
月並みだけどWikipediaで検索してみた。

三島由紀夫には、ギリシャ熱が高まった時代があった。
その時、古代ギリシャの崇高な神々に思いを重ねながら
物語を書こうと、この潮騒の舞台を神島に定め、書き上げていたことが分かった。

くしくもシチリア島は、古代ギリシャの植民地として栄えた都市が点在し
作品に込めた彼の思いのルーツが、シチリア島にもあった。
それを思うと、
若い僕が、あの時あの場所でこの本に巡り合えたことが
僕の大事な思い出が、さらに良い形にバージョンアップされたという
自己満一つ星が増えた。

大事な思い出をアップデートできるって
また私の人生が豊かになったと感じた瞬間でした。

皆さんにもお勧めです。
思い出のアップデート。

簡単です。
僕と同じように、思い出すだけで良いんです。
ただ、いつもより、少しだけ丁寧に思い出すだけ。

■私の大事な思い出の始まりはこちら

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