2021年某日。
皆さんは旅行に出かけるとき、本を持っていきますか?私は、旅行には持っていきません。しかし、旅をしたいと思ったときは、本を選びます。どんな本を持っていこうかと、じっくり、ゆっくり考える時間も好きです。
このイタリア旅行に選んだ本は、今思うと本棚にあった未読本をいくつか詰めただけ。当時その本を選んだ理由は、特にありませんでした。
最近、どんな本を片手に“旅”に出かけましたか?これからどんな本を持って、大好きな旅へ出かけようと思っていますか?
今回の話も、特に中身はありません。この旅行に持って行った本の話を少しします。結果的に持って行った本が、偶然だったとしても、20年以上たった今も、良い選択だったと思っています。
なぜなら今も、私の本棚に日焼けした同じ本が並んでいるから。

1996/12/12~14 シチリア島にて
(日記からところどころ抜粋)
今、車窓から海を眺めながら本を開いた。イタリアに入って、初めて本を開いた。せっかく持ってきたのだからと、たっぷりある電車の中で、持ってきた本を思い出して読み始めたのである。
冒頭はこうである。
「歌島は人口千四百、周囲一里に充たない小島である。……」
そして、伊勢湾、三河湾の眺めがいかに綺麗かの描写から始まる。
僕はこのシチリア島を走る列車の中で、三島由紀夫の『潮騒』を読み始めた。
冒頭で、知っている場所が舞台となっていることが分かって嬉しかった。寂しい一人旅に、そっと仲間を見つけた気分になれた。
舞台となる神島は、伊良湖と鳥羽を結ぶフェリーがそばを通る。アナウンスで神島通過の知らせがあると、よく甲板に出て眺めていたのを思い出す。
新治と初江の出会いの場所、伊良湖の3階建ては、昔は地元で有名な心霊スポットで、子供たちに恐れられている場所。
そう、昔少し過ごしたことがあった場所が、舞台となっていた。
無駄に眺めていた海辺の景色に、ぱっと物語の世界と重なって、一つひとつ意味のあるような世界に変わっていく景色……
なんて、大げさなことは全く思わないけれど、のんびり一人旅に「ワクワク!」が一つ増えたことは、単純に楽しい!さて、これからどんな展開になるのやら。でも、三島由紀夫の小説って、意外と読みやすかった。それも驚いた。
(つづく)

2021年7月 某日
僕は、三島由紀夫のファンでもなければ、崇拝者でもない。『潮騒』に書いてあること以外は何も知らない。
だから、そもそも『潮騒』をどんな思いで書いたのかに興味を持って、月並みだけどWikipediaで検索してみた。
三島由紀夫には、ギリシャ熱が高まった時代があった。その時、古代ギリシャの崇高な神々に思いを重ねながら物語を書こうと、この『潮騒』の舞台を神島に定め、書き上げていたことが分かった。
くしくもシチリア島は、古代ギリシャの植民地として栄えた都市が点在し、作品に込めた彼の思いのルーツが、シチリア島にもあった。
それを思うと、若い僕があの時あの場所でこの本に巡り合えたことが、僕の大事な思い出を、さらに良い形にバージョンアップしてくれた――自己満の★一つが増えた。
大事な思い出をアップデートできるって、また私の人生が豊かになったと感じた瞬間でした。
皆さんにもおすすめです。思い出のアップデート。簡単です。僕と同じように、思い出すだけで良いんです。ただ、いつもより、少しだけ丁寧に思い出すだけ。
■私の大事な思い出の始まりはこちら

■2026.7.31 追記
あれから30年経った。生まれ育った渥美町(現田原市)を改めて確認した。「潮騒」の伊良湖の3階建てだけど、私の記憶は6階建てだった。あれ?私が覚えているのは6階建のお化け屋敷。
気象塔兼展望塔(旧陸軍伊良湖射場)→ 私が覚えていたのはこちらの6階建。あれ?これも間違えている?


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