1996.11.30(土曜) 名古屋
5:45起床。
旅行前日、そう、昨日は忙しい一日だった。
着ていくものを買いに行き、白黒フィルムを25本も作成し、少ない友達リストをもとに片っ端から電話をかけた(「行ってくるよ!」って)。
最後は、初めての海外にビビる自分と向き合った時間。そして、当日。
今日は、もう行くしかない。気持ちはすっかり元気になっていた。
大丈夫、やれる。所持金は現金8万円。飛行機は1ヶ月のオープンチケット(帰りのフライト日が決まっているチケット。今回は約1ヶ月後の12月26日にイタリア発)。
旅を終わらせて、途中で帰ってくることのできないチケット。さあ、気持ちに喝を入れて。
3週間イタリア中を駆け巡れるレイルチケットもある。何とかなるかな、と思っている。
初めての海外。宿泊先は初日も決めていない。
ローマ着、1ヶ月後のローマ発。完全フリーのイタリア一人旅。これから飛行機に乗る。初めての飛行機だ。

大韓航空KE767 40K 窓側。9:30名古屋発、12:00ソウル着。
何がなんだかわからぬまま、飛行機の中へ。あれよあれよという間に、テイクオフ。
高度が上がる。耳が苦しい。これか!飛行機で耳がキーンってやつ。何もかもが新鮮だ。
仁川(インチョン)空港到着!
飛行機で隣の人の話だと、イタリアは治安が悪いんだって。そんなこと言わないでよー。
でも大丈夫。体は元気だ。それに今は、ワクワクが勝っている。さあ、楽しむぞ、一人旅。
でもインチョン空港は日本人がたくさん。まだ初めての外国に来たという実感はない。

13:30、仁川(インチョン)空港発、ローマ行きを待つ。搭乗口は17ゲート。ところが、トイレに入っている間に変更になったみたいだ。電光掲示板は15ゲートを表示している。でも、空港の職員に聞くと16ゲートだと言う。どういうこと?飛行機って、こんなに乗る場所が変わるものなのか?こんな形で、海外に来たーって実感が湧くなんて……。無事に仁川空港を出発できた。
何もかもが初めての経験。機内食も、飲み物選びも初体験だ。
スチュワーデスさんを呼び、緊張しながら水が欲しいと頼む。何かをしてほしいと、自分から言わなければもらえない。当たり前の話だ。これが外国か、なんて無理やり初めての海外感を楽しんでいる。
こちらが主張して初めて、自分の存在を認めてもらえる。そのために、しっかりとした主張が必要だ。
自己主張――これを一番鍛えなければいけない。旅の目的の一つにしよう。そう、今思った。
機内で日系2世のおじさんと話をする。英語、ブラジル語、スペイン語……たくさんの言語を使いこなせる人らしい。とても勉強したんだって。ビデオとテキストを繰り返し聴いたり、ふむふむ。勉強になります!
ローマに到着。日本時間で、1日目の夜中の3時33分着。
しかし、ここで大ハプニング!!!
バスも、鉄道も、全国ストライキだ。どこへ行くにも手段がない。俺、初めての海外だよ!
空港から出られない。もう、プチパニック。
落ち着いて、リラへの換金を行う。7,000円を両替し、79,000リラをゲット。
空港で泊まろうと思ったが、怖くて思い切れず、とりあえず街へ行こう、と。
ローマのユースホステルの場所を聞こうと、観光案内所・紹介所を探す。これが、この旅の最初の大失敗だった。
紹介所から連れて行かれたのは、タクシー(ベンツ)。
タクシー代は、空港からローマまで25,000円。
しかも、降ろされたのは、ローマ、テルミニ駅近くの高級ホテル街。
星が付きそうな、1泊80,000リラのホテル。
しかも現地時間の夜10時に降ろされ、タクシーはさっさと去っていく。
強面のタクシー、30分で25,000円。ぼったくり?初日に?
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20数年ぶりに思い出すと、当時は初めての海外で、到着したのも夜だった。初日からノープランの旅行。
度胸もない私は、何が何だかわからないまま、ストライキだと言われたことを信じてしまった。本当にすべての交通機関が止まっていたのかは、今思うと疑問だ。電車の乗り場やバスの乗り場を確認してもよかったな、と思う。あれよあれよという間に、先導されるまま、おそらく個人タクシーのベンツに乗せられた。
途中、夜景にライトアップされたローマの水道や凱旋門に、目の前のローマの景色に見惚れながら、置かれている状況に気づかずに旅をしていた。車窓の眺めを楽しんでいた。
降ろされたのは、テルミニ駅の近くの、おしゃれな街並みのホテル。値段は高すぎて泊まれない。
タクシーのぼったくり25,000円が、持ち合わせていた現金の3割を占めていたこと。そして、真っ暗な夜10時にローマに放り出されたという現実と虚無感。
必死になって見つけたテルミニ駅の旅行窓口。そこで紹介されたのが、8人部屋のドミトリーだった。
ローマ初日、一人旅初日。宿泊先が決まり、やっと荷物を下ろすことができた。
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8人部屋のドミトリーは、いっぱいだった。広場には、男女10名ほどの多国籍のバックパッカーが輪になって、楽しそうに話をしていた。
みんなの輪に入れてもらう。が、会話はあまり理解できない。
どこかで体験したスカイダイビングがすごかったぜ、みたいな話で盛り上がっているんじゃないかと……。
「Nice to meet you」
「I came from Japan」
「May I stay here?」
ローマ初日は、24時就寝。
その日の夜は、大勢の輪の中に座ったが、誰とも通じ合うことができなかった。そのまま、最高の孤独を味わった。
イタリア最高!
誰だ、俺に一人旅は最高だって洗脳した奴は!



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