18.拝啓 パレルモの皆さん

1996年イタリア一人旅

1996.12.12(木) その③

拝啓 *※*さま

パレルモはとても不思議で恐ろしい、そして楽しいところであります。

若者にはジロジロ見られ、こちらも負けじと睨むと、ニコッと笑ってくれて、通り過ぎた後、皆で爆笑!

車庫で仕事をしている人に「フォト?OK?」と言えば、「構わないよ!」と撮らせてくれる陽気なおじさん。

アーミーファッションだと思ったら、肩から本物の拳銃をぶら下げて周りを窺っている2人の軍人さん。

ここの子供たちは、とても良い子です。爆竹でパンパンとうるさいけれど、言葉も通じない、わけのわからない日本人に、駅行きのバスを親切に教えてくれます。

「お金がないよ」と言えば、大きな声で「お金は入らないよ!」と返してくれる。バス停で並ぶ他の乗客に丸聞こえで、とても恥ずかしい。

そんなこんなで、パレルモももうそろそろ出ようかと思っております。

街を歩いても、なんだか落ち着けないのです。夜行で来た私の心と身体が、まだパレルモを楽しむ準備ができていないのかもしれません。親切な人の行為も含めて、落ち着けないのです。

やっぱり、元の目的だったシラクーサが良かった、という気持ちが、秒ごとに積もっていく。さすがは、シチリア島第一の都市、パレルモ!

次にチャンスがあれば、心と身体を整えてきます。パレルモ!

今回は残念ですが、また今度!

敬具

けいじ 12/12 noon


―― 旅する読書人より 2026.7.25

「不思議で恐ろしい、そして楽しい」――パレルモという街を、たった一言で表したこの表現に、彼の正直な驚きと困惑が凝縮されている。

手紙の形式を借りることで、彼の本音も、少しは整理されて見える。本当はもっと混沌とした感情だったかもしれないけど、それでもこの手紙を書くことで、彼なりに納得して、前に進もうとしている。

「今回は残念ですが、また今度」――そう言えるのが、パレルモへの別れの挨拶としては、なかなか良い距離感だ。


■この旅の始まりまりはこちらから

00.viva! Italy! リーラ!
1995年5月25日。野茂英雄が日本人メジャーデビューを果たした、歴史的な日だった。その1年後、僕は初の海外旅行デビューという、個人的な快挙を果たす。無計画で失敗の連続。初めてだらけの海外一人旅。時代はEU統合前。もちろんユーロなんて存在し

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