1996.12.01
7:45に起きて、テルミニ駅へ向かう。ローマ初日の失敗を忘れたい。気持ちをリセットしたい!
早朝、ドミトリーを出た。初めての海外。初めてのローマ。最初に向かったのは、ローマ駅のトイレ。位置が高い便器に、慎重に、慎重に。
ローマに来たら最初に行きたい場所は決めていた。さあ、コロッセオ。行くぞ。
「地球の歩き方」でバスの乗り方を何度も確認してから、バスのチケットを買った。5,000リラのお釣りがなかなかもらえない。おいおい、マジっすか。
「Hey! 5,000 Lira! Please!!!!」 なぜか自然と、やったこともないジェスチャーが出ていた。
昨日のぼったくりの悪夢で、僕の海外アンテナはビンビンに張り巡らされている。
コロッセオ。教科書通りのコロッセオ。……からの、コロッセオ。
コロッセオからトラステヴェレの蚤の市通りを5往復。途中、何度も腕を掴まれた。その腕を振り払うのが大変だった。

「Don’t touch me!」 相手を睨み、手を振り解く。それでもしがみついてくる。「ペルメッソ!」。
痛い心と向き合いながら、向かってくる手を振りほどく。
現地の人は「殴ってしまえ!」と言う。いやー、子供や女性にそんなことできるわけないじゃん……。
なんか、この悶々とした心の落としどころが難しい。
そんなこんなで、真実の口に手を入れている俺。絵に描いたような海外旅行の完成!祝・海外満喫時間!

あれ?なんだか楽しい。知らない街を歩くって、なんだかいい。次の角は全部右に曲がる!とか、何をやっても楽しい。しかもローマって、どこを歩いてもかっこいい!
見つけたよ。旅って、楽しいかも。

どうしてもトイレに行きたくなり、そのままテルミニ駅へ。ローマでトイレってどうしたらいいんだ?急いで駆け込む。ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世通りからテルミニ駅へ、あの坂を上るのを何度もやった。
たくさん歩いた自分へのご褒美に――って、ジェラートを買った。こういう、初めての買い物。ローマ駅の売店で。
キウイとピーナッツのダブル、3,000リラ。うまい。コーンもうまい。
これか。みんなが「絶対旅って楽しいから!」って言ってきたのは……。
旅が楽しい!という経験者の傲慢な押し付け。それだけじゃなかったかも、と、さっきの物乞いの話もどうでも良くなるくらいの満足感が、このジェラートにはあった。
たくさん歩いてくたくた。そのままホテルへ戻る。
今日これまでの出費:バス3,000リラ(往復代)、ジェラート3,000リラ。合計6,000リラ。
現在の所持金:43,200リラと、47,000円。ローマ滞在期間は残り26日。
今日は6,000リラで終わらせようと思ったが、当たり前だけどお腹が空く。我慢できず、ピッツァ(テルミニ駅前)を食べた。
ピザ 3,000リラ、ペットボトルの水 1,500リラ、それにビール 1,420リラ。合計 5,920リラ(午後)。
1万円を両替してもらい、125,000リラに。晩御飯はもう一度ピザ 3,800リラ。
12月1日、今日の出費は、最終的に13,200リラ。
さあ、寝よう。明日からどこへ行こうか?
―― 旅する読書人より 2026.7.24
「キウイとピーナッツのダブル、3,000リラ。」
この一文で、彼の旅がようやく始まったのだと思う。
ローマ初日の混乱と不安の中で、手にした一つのジェラートが、それまでのすべてを「どうでもいい」と思わせてくれた。物乞いの手を振り払いながらも、心のどこかで感じていた違和感を、その甘さがそっと包み込んだのだろう。
「旅って、楽しいかも」――その言葉が、この先の長い旅を支える、最初の小さな光になった。多分、あのジェラートは、それだけの力を持っていたのだ。
ローマ初日の失敗のこちら



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