03.人生の最大の悩み、それはズバリお金。

1996年イタリア一人旅

1996.12.2

6:37起床。そのままロビーへ。ドミトリーの受付フロアでこの日記を書いている。今日をどう過ごそうか……。まだ20日以上もあるのに。

所持金は151,180リラと37,000円。

昨日の余分な買い物は、ペットボトルの水。スーパーへ行けばもっと安かった。ビールも、全部飲めなかったから余計だったな。バス代も、歩けるじゃん、って思った。

こうなったら、ローマで10日間まとめて泊まることで安くしてもらい、ローマを中心に日帰りコースで遊びに行くのはどうだろうか。

「12月10日まで泊まるから」って、値下げ交渉してみようか!

朝食もスーパーのお惣菜で節約し、宿泊は値引きを頑張って、9泊10日で153,000リラに抑えられないか、チャレンジするしかないな。そう決めたら即行動。8人部屋ドミトリーを朝8時にチェックアウト。

そのままテルミニ駅を背に真っ直ぐ歩く。2,000リラのサンドイッチを食べながら……。さっき「地球の歩き方」で見つけたホテル、パパ・ジョルマーノ。9泊(25,000リラ×9)、カード支払いで約束。あれ?値切れたのか?まあ、安く抑えられたんじゃないかな。

荷物を置き、外へ出た。今日もたくさん歩こう!色々見て回ったあと、絵を描く。午後からもひたすら歩く、ひたすら。体を動かしてばかりいると、体力が落ちる。なんか食べないと持たない、と気づいて、お金は使っちゃうけど市場へ向かった。マスカットとリンゴで栄養補給。買っちゃえ!

市場も楽しい。服、靴、いろんなものが安く売っていて、どれも欲しい!

そしてスペイン広場にやっと着く。すると、他のどこよりも日本人がバリバリいる。1ブロック、日本人だらけの行列があったので、何の集まりか聞いてみた。岩手の短大の旅行だって。俺は一人旅なんです!――一人旅の優越感と、だからこその孤独感が、ハーフアンドハーフ。

今日もトイレに行きたくなる。ここまで来てローマ駅へ戻るのも無駄な気がして、今日はマックへ行く。マックナゲットとコーラで7,300リラ。しまった!トイレ目的だったのに……お金がないのに……。

スペイン広場にはブランドショップがずらり。やっぱり高い。当たり前だけど、他の通りの方が安い。スペイン通りは、本で読むような危険がたくさんありそう。

今日の出費(ここまで): 市場(リンゴ、マスカット)17,300リラ、マクドナルド 7,300リラ、手紙 1,500リラ、ワイン・水 5,100リラ、ハンバーガー 2,000リラ。

スペイン広場でこれを書いていると、シチリア出身と名乗る、見た目がとっても汚い親父が話しかけてきた。やばそうなオヤジで、犬を連れている。

「Can you speak English?」
「Yeah, little.」
「H※ SH※ SH ※ ?」(※自主規制:薬やるか?みたいな仕草)
「Pardon? Oh! No, no. I don’t play.」
「OK, OK. Don’t worry! Don’t worry.」
「No problem.」

両親へ送る手紙を買い、スペイン広場で書く。日本人観光客に、日本でのポスト投函をお願いした。8日に帰るらしい。

スペイン広場を歩いていて、日本人とすれ違う時、変に気取りたくなってしまう。相手も同じ気持ちなんじゃないかと思うと可笑しい。相手が外国人だと、ジロジロ見てくるからか、笑顔で答えてくれる。だからこちらも必要以上に笑顔を振りまいて歩ける。けど、向こうから日本人が来たと分かるや否や、急に顔を背ける。お互いに、大きく見せようとしてしまう。見栄を張ってしまう。そのくせ、困ると日本人を頼りたがる。

今日は、ポポロ広場、スペイン広場まで歩いていけた。

とても疲れたけど、ローマをいろいろ歩けて、道を覚えることができた。嬉しい・楽しい。外国で歩くって楽しい! 視線に入ってくる刺激が違う。すべてが僕にとって新しいから。

ホテルに帰る前に、ワインと水、ハンバーガーを買った。部屋には2人、白人男性が立っていた。そう、9泊する部屋は、昨日の8人部屋ほどじゃないけど、4人部屋だ。

一人はアメリカ出身で、バチカンに修行に行くらしい。3日間連続で。もう一人はオーストラリア出身で、一緒にバチカンへ行くらしい。二人はこの部屋で――っていうか、さっき知り合ったらしい。とても親切な二人。英語を教えてほしいって言ったら、どんな質問にも答えてくれる(英語の本を買って、わからない単語を教えてくれる)。それに、話をしてくれる。

俺、一人旅楽しくなってきました。


―― 旅する読書人より 2026.7.24

「9泊10日で153,000リラ」という計算が、この日の彼の中心にあったらしい。

計算は合っていたのか、それとも無駄な値切りの努力だったのか。今となってはわからない。

スペイン広場で出会ったシチリアの男との、おぼつかない英語のやりとりも、結局は「No problem.」で終わった。話の内容よりも、そのぎこちなさが、むしろ旅の空気を伝えているように思う。

そういうものだ。旅は、必ずしもドラマチックな瞬間だけではない。


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