1996.12.11(水)
21:00頃、電車に乗り込む。僕の大好きな個室列車だった。
廊下から、一部屋対面6人席の個室。座席を引くと、対面ごとにベッドになる。対面3列すべて座席を引けば、オールフラットのダブルベッドサイズ以上になる快適な列車。この日、ローマからシラクーサまでの列車は、曜日が良かったのかすいていて、個室独占状態!ラッキー、かと思った。

そしたら、シチリア出身の大男がドアを開けた。「いいですか?」って入ってきた。怖くて怖くて。けど、彼はギターを持って入ってきた。ミュージシャンだ。名をジョバンニ(仮称)と名乗る。彼の口癖は、「No Problem. No Problem.」
やっとこの時、日本から持っていた写真が役に立つ時が来た!って思った。2人ともカタコトの英語で意気投合。手紙を送るよ、と写真ももらって……というと、彼は自分のミュージックソングのカセットをくれた。
もしやビッグミュージシャン?「CD出している?」と聞くと、「バンドでは出した」と言う。「EM**** Band」……ますます有名では?でも、キュアー、ニルバーナ、ポリス、プリンス、ブラジルミュージック、ジャズ、いろんなものをギターで弾いてくれた。歌ってくれた。とても上手だった。
住所も交換!イタリアは良いところだと感じた。英語で少しずつだけど、お互いのことをたくさん話せた。とても良い人。でも、この良い人が悪いことも?するのかな?明朝、何か取られていたり……とか笑。人を見る目はとても難しい……。
「とても親切な人に信じれる人はいない」というが、この場所は例外である。ジョバンニは良い人であり、信用できると思う。なんていったりきたりが、頭の片隅から離れない。
イタリアでは1年、兵隊に行く義務があるという。18歳から。彼はパレルモへ行ったらしい。「日本はそういうのは無いのか?徴兵制度!」と聞かれ、説明に困った。徴兵制がない国を理解してもらうのが難しかった。
話は続く。彼はすごい。ミュージックを仕事にしていくという。そのために今勉強をしているという。ローマでサイモンに英語を教えてもらってよかった。事前に免疫ができたみたいだ。今、英語がとても役に立っている。ジョバンニはとても辛抱強く、僕の英語を聞いてくれる。単純な僕は、素直に彼にはビッグなミュージシャンになってほしいと思った。
俺も!何かやり遂げたいなあ。
さらにさらにさらに!彼女を紹介された。彼が見せる写真。めちゃくちゃ美人。今はフリーのモデルさん。なんだか、ミサンガの効き目が早くも効いてきたんじゃないかというほど、楽しい時間だった。幸先の良い、楽しい夜行電車トリップになった。
もう11時を過ぎた。今、フォルミアあたりだろうか。
そろそろ寝ようか……という感じで就寝。大丈夫かな?起きたら、荷物がなくなってるってことはないよね!っていうのは、楽しい時間でも、頭の片隅から消え去ることはなかった。

AM 5:28。ごそごそ動くジョバンニの物音で起きた。
「俺はパレルモ行きだから」って、彼は別の列車へ。シチリア島に着いたのである。ここからパレルモ行きとシラクーサ行きに、この電車が分離する。
ありがとう、ジョバンニ。あなたは最高のミュージシャン、エンターテイナーでした。あなたのおかげで、私にとってのイタリア人は優しい人たちになりました。
―― 旅する読書人より 2026.7.24
夜行列車で出会った、ギターを持った大男。怖さと好奇心が入り混じった最初の一瞬が、すぐに音楽と笑顔に変わっていく。
「No Problem. No Problem.」――彼の口癖が、その夜のすべてを象徴しているようだ。そして、朝が来て、彼が別の列車へと去っていく。その別れ方は、あまりにさっぱりしていて、まるで夢を見ていたかのようだった。
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