○1994.12.14 その④
9:30にやっと電車が来た。最初に来た電車はいっぱいで、すぐ次に来た電車に乗る。少しすいていたから。黒人の女性が親切に、私の行き先を周りの人に聞いてくれる。
しかし……しぐさが少し変。鼻に何かを突っ込み、すってる、すってる、すってる。恐ろしい光景。やばいドラッグですか?思わず聞きそうになる。イタリア語ができなくて、本当によかったと思った瞬間である。
そしたら、この電車もダメだってわかった。目的地まで行けない。
慌てて、ほかの車両へ移動する必要がある。
けど、廊下に出たらまた激混み。みんな席に座れよー。
ほかの車両を探すのもあきらめた。
荷物を持っての車両移動は、こんな人にあふれた廊下ではもう大変。
しばらく別の電車を待とうと思い、待合室へ移動。
もう今夜は待合室で夜を過ごそうかな。
でも、同じような「あきらめた人」が3人いた。少し怖いけど、殺されることはないでしょう。
10分くらいたっただろうか。変な2人組が入ってきて、もともといた3人に話しかけている。そして話しながら、僕のことをにらみつけてくる。
p>ここで寝てもいいかな、と思いを巡らせても、やっぱり怖い。チキンな僕は、荷物を持ってホームへ出る。
パレルモ行きが⑦ホームを確認して、⑦ホームへ行く。そしたら、偶然にもMilano行き22:30発があるじゃないですか。
しかも、席が空いている!よかった。これでローマで途中下車せずに、そして野宿せずに済む。よかった!
列車も予定通り発車。最後の怒涛の乗り込みもなく、まず一安心。
が、またすぐに止まってしまった。横の列車も止まっている。さっきの激混み列車。
けど、何とか再発車。今度こそ安心して、大好きなベッドになる個室で寝れそう!
今回の旅行で詰めてきたシュラフにくるまって寝れそう。

そこで、皆さん聞いてください。
この列車、この後どうしたと思いますか? そのまますぐに、イタリア本土へ向けて海を渡るんです。
長いトンネルをくぐるの? それとも、そのままぷかぷか海を泳いでいくの?
数日前、本土からシチリア島へ上陸した時は寝ていてわからなかったけど、その謎が今日やっと解けました。
僕が乗った電車は、22:50、真夜中の中、乗客を乗せたまま船場へ向かっていく。徐行しながら、後ろハッチが開いたフェリーにまっすぐ吸い込まれていった。
想像できない出来事、場面に遭遇。そんな感動があった(書いていて、これは文では伝えることが難しいな、と思った)。
どうやら、自由に席を離れて甲板へ上がれるらしい。
もう荷物大丈夫かな、ってことは――そんなことより、フェリーに乗っている今に興奮してしまっている。
車窓から見えるフェリー内部。「SELF-SERVICE AND BAR」が上にあるよ、って書いてある。
シチリア島のみんなは、島を出るときはいつもこんなにエキサイティングなことをやっているんだろうか。もしくは、タバコを吸いたければ火をつけるように、昔からのいつもの日常の一つなんだろうか。
ただ、旅人には感動の瞬間、間違いなし。
だって、イタリアのブーツ(本土)からシチリア島へどうやって渡るか、知ってました?(博識な方やイタリア好きな人は知ってたかもしれないけど。)
で、僕の話に戻します。
ただただびっくりしている僕は、さっそく独り占めの個室の豪華列車で快適な中、さらに僕の好奇心をくすぐるべく、部屋を、電車を降りて、フェリーの甲板へ上がる。
いくつもの扉を開けて、いくつもの階段を上がる。そしてまた扉を開ける。
次第に足取りも軽く、速くなっている。
そして、抜けた!
イタリアってところはすごいですね。
甲板は、バーに入らなくても外にはベンチがあり、ゆっくり外を眺めることができる。電車に乗りながら、フェリーを楽しみながら、それでいて夜景も堪能できる。
向かいの島の家々の明かりが、きれいにシチリア島をライトアップしてくれている。
ただそれだけで、イタリアがすごい国のように見える。栄華の極み!
庶民の僕にはこれで充分!おなかいっぱいだと思った。
何度も言わせてください。
メッシーナから本土が見える――とてもキラキラ輝いている。僕の一人旅の折り返しを祝ってくれているようだ。
ゴージャスで、ワンダフルで、グッドです。
次にイタリアへ来るなら、パレルモから入国し、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィア、ミラノっていうコースもありだな、と思った。
もちろん、この列車・フェリーがメインの旅行。フェリーの時間は、もちろん夜行ですよ。絶対。
ありがとう、イタリア、シチリア島!
(午後11時15分、フェリー甲板にて)


と、ここはリッチになっても良い時だと思い、フェリー甲板のバーでカプチーノとケーキをオーダー(13,100リラ)。潮風にあたりながら、夜景を楽しむ。お金がなくて困っていた僕も、この時ばかりはリッチな気分。幸せな時間。
そろそろ、個室のベッドに戻って寝ようかな(午後11時35分、甲板にて)。
ガタガタっという音で起きる。対岸へ着いたようだ。しばらく対岸の街ヴィッラでずっと待機。ありがとう、シチリア島。僕はもう少し寝ます。
p>(午前2時04分)
―― 旅する読書人より 2026.7.25
列車がそのままフェリーに乗り込む――その光景を、彼は「想像できない出来事」と書いた。
確かに、それは普通の旅ではまず経験しない。けれど、シチリアの人々にとっては、日常の一部なのだろう。そのギャップが、彼の感動をより一層、特別なものにしている。
「ゴージャスで、ワンダフルで、グッド」――このシンプルな言葉の羅列に、彼の興奮が凝縮されている。言葉にできない感動を、彼はこうして残そうとしている。
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