34.電車は最高の出会いの場。イタリア語を覚えて電車に乗ろう!イタリアで。

1996年イタリア一人旅

1997.12.17(火) その①

AM 7:00に起きて、朝食を食べに行く。食堂で日本人夫婦に会う。彼らも一か月旅行中だそうだ。

昨日は、日本人と韓国の人たちが集まって、消灯時間まで話をした。

デザイナーの知り合いと友人。英語がうまい韓国の人。見た目より本当は若い女性。僕とデザイナーの人以外は、みんな英語ペラペラ。ワーキングホリデイ経験の女性や、旅慣れしている男性。やっぱり、英語が話せるだけで、旅って何十倍も楽しくなるんだろうな、ってその人たちを見て思った。

帰ったら、勉強しよう!英語。

昨夜の話で、怖い話で盛り上がった(たぶんバックパッカー同士でよく話題に上がるんだろうな、っていう話)。

インドで女性がさらわれることが多く、見つかるのはヨーロッパで悲惨な姿になった状態で、とか。フィッティングルームの壁は実は隠し扉になっていて、友人・知人に気づかれないままさらわれてしまうから気をつけろ、とか。ここに書けないようなおぞましい話もあった。

本当にそんなことあるの?ほんとに?初めて日本を出た僕は、驚く話ばかりだ。

「日本は島国だから。日本は他と隔離されている島だからね。」

いろいろ世界を知ってます風な男性が言い切る。

そうなのかなあ。

日本で幼い頃から頑張って、海外旅行もツアーぐらい。海外の文化や言葉はわかっていても、海外の怪しく危険な部分を感じたことがない人が、大企業や、そうじゃなくてもエリートとして日本で頑張っている大人はたくさんいると思う。そういう人は、海外へ行っても通用するエリートなのだろうか。

別に海外へ行く場面がなければ、日本の中で頑張ればいいんじゃない?海外のことを知らなくても。

でも、日本でエリートになれる人は、海外で過ごすことになってもやり切れるんだろうな。そういうパワーを持った人が、日本でも出世や上のステージへ昇っていくんだろうな。

でも、やっぱり日本でエリートでなくても、これからは英語を覚えてインターナショナルな感覚を磨いていかないと、日本が、国が遅れていくよな。世界シェアを伸ばす企業、海外で勝てる会社が少なくなると、日本の価値、パスポートとか、円とか、不便になっていくよね。

世界でパワフルに活躍できる人材にならんと!!!そのためにも、最低限英語じゃない?

ずいぶん熱い話で盛り上がる。こんな話を真面目に夜中まで話せるのは、異国で出会った者同士の特権だろうか。

最後まで、僕の向上心は火照ったまま。でも、英語を話せず、そんなこと今まで考えたことなかった僕は、いまいち場になじめていないことも自覚していた。でも、なんとか参加する(ローマ初日の苦い思い出があるから)。

朝起きても、そんなに覚めることなく、変なやる気が残っていた。パワー全開な感じ。

もうフィレンツェは出よう!北へ!

ミラノへ行こう。11:05の電車で、ミラノへ行こう。

ミラノ→ヴェネツィア→ローマ→日本。

残りの2週間はこれでいこう。

帰る日が少しずつ迫っているな。

(午前9時10分、ユースホステル)

フィレンツェ駅に着いた。10時前だ。都合の良いバスに乗れて、予定より早く駅に到着。フィレンツェよ、さらばだ。

ミラノへ2泊、ヴェネツィアに2、3泊して、大好きなローマへ帰ろう。

10:07発、バーゼル行き。予定だと13:00にミラノに着ける。

イタリアは、優しい人が多い。電車で、鼻水が出すぎてハンカチ1枚で何度も何度も格闘していたら、隣の兄ちゃんが「次に降りるから」ってティッシュをくれた(よっぽど見苦しかったのかな)。

さっきも、フィレンツェ市内のバスで、乗ってきた老婆に自然に席を譲るピアスの若者。おばあさんが、チャラい女の子に「足が痛いから座らせて」って頼む光景、そして自然に席を譲るチャラい女性。どれもフィレンツェの日常なんだろうな。

全てが当たり前のように事が進んでいく。福祉や道徳の教育がしっかりとした国なんだろうな、と思った。若者とお年寄りが寄り添える社会ができていると思った。

イタリア、素敵じゃん。

電車はボローニャで停車。イタリアでの電車移動は気に入っている。知らない土地を眺めていて飽きない。

ずっと景色を眺めていた。日本に帰ったら、どうやって英語の勉強をしようかな。

新聞は毎日読もう!とか、テレビニュースは副音声で英語で聞こう!とか。帰ってから何を頑張ろうか考えていると、日本が恋しくなる。寂しい。

でも、歌って紛らわそうとしても、歌える曲がない。海外の曲を歌詞も覚えず雰囲気で楽しんでるだけだったから、いざというときに一人で音楽を楽しむことができないんだよな。

「らららー、ムムムー、フンフフーン」なんて、適当な言葉でメロディを口ずさむと、必ずと言っていいほど、この時だけはもう一人の僕が現れる。

p>「やめたほうがいい」と。

p>ただただ格好悪い。

p>(午前11時50分)

イタリア人は、電車に乗るとそこが出会いの場となるらしい。色んな人との会話を楽しみながら旅をしている――そんな場面をたくさん目にした。

僕の部屋は、僕みたいな外国人がいるから、みんな期待していないのか、避けて入ってこない。だって、他の部屋は、みんな!本当にみんなの部屋はいっぱいなんです。なんか複雑な気分になる。僕の席だけガラガラで、他の部屋は満杯。しかもみんなめっちゃ盛り上がっているように見える。

ただ、大丈夫。僕にはまだ、異国の風景を楽しむ余裕があるから。

フィレンツェからミラノに向かっているときに、面白いなと思ったことがあった。おかしな木たちだ。

日本にあるような、ツルツルで枝のない木がない。生え際から枝がある木しかない。草原にぽつんと生えている木。

「変だなあ」って、見慣れないなあっていう木が気になった。そうやって考えて、自分のガラガラの席で何とか楽しもうとした。

そろそろかな。ミラノ。

p>みんな廊下にぞろぞろ出始める。

フィレンツェからミラノって、結構近いね。

(12時37分、ミラノ)


―― 旅する読書人より 2026.7.25

「英語が話せたら、もっと旅が楽しくなるんだろうな」――そう思う気持ちと、今この瞬間の景色を見逃したくないという気持ち。その両方が、彼の中にはある。

他の部屋は盛り上がっているのに、自分の席はガラガラ。その寂しさを、彼は「異国の風景を楽しむ余裕」と言い換えた。なかなか、うまい言い方だと思う。


■この一人旅の始まりはこちらから

00.viva! Italy! リーラ!
1995年5月25日。野茂英雄が日本人メジャーデビューを果たした、歴史的な日だった。その1年後、僕は初の海外旅行デビューという、個人的な快挙を果たす。無計画で失敗の連続。初めてだらけの海外一人旅。時代はEU統合前。もちろんユーロなんて存在し

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