思い出の場所が、今もその姿を残しているって、嬉しいですよね。
そういうことですか――遺跡や有名な観光地は、その姿を後世に残そうと、ずっとその景色が残っていく。だからいつまでも、いつまでも、人の思い出のまま、過去の人も魅了し続ける。
だからいつまでも、愛される場所となる。
私には私の物語がある。そのストーリーに色を添える思い出の場所がある。そんな大事な場所が今も残り続けてくれることに感謝。
忘れかけた記憶も、存在してくれていることで、もう一度思い出しやすくしてくれる。私自身の色褪せた物語も、再び鮮やかなものに吹き返してくれることができる。
パパ・ジェルマーノ! 僕の青春。僕はここから大人になった!そんな大事な場所。今も頑張ってくれていることに感謝です。気づいたら、二つ星ホテルになっていました。
1996.12.22(日)
朝7:30に起きて顔を洗った。朝食を食べに行く。昨夜は会えなかった日本人バックパッカーがたくさんいた。トルコで語学を勉強しているカップル。ローマで仲良くなったNさんとパリで旅をしたという日本人。繋がりを感じる。日本人同士のバックパッカーのネットワーク。
旅を経験している人は当たり前だと思うかもしれないけど――海外へ旅に出ていると、今どんな人がヨーロッパでどこからどこへ向かって旅をしているか、という情報が飛び交っている。どれくらいのタイミングであの町へ行けば、まだ会ったこともない、知れ渡っている旅人に出会えるかもしれない。
そんな世界がバックパッカーの間にはある。日本人が好きなユースホステルに泊まると、こんなネタが多い。
安心できるし、楽しい。久しぶりの日本語も嬉しい。
みんなが「セリエAの試合を見たか?」と聞いてくる。そんなに心もお金も余裕がない僕には手の届かない経験だと思っていたけど、話を聞くうちに、せっかくイタリアへ来たのだから行かないともったいないと思うようになった。ローマに着いたら、サッカー観戦に挑戦しよう!
フィレンツェのユースホステルは綺麗な建物で清潔感があった。日本人とも楽しい話ができて、栄養もとれて、温かいベッドで寝ることもできた。フィレンツェに寄ってよかった。
さあ、ローマへ戻ろう!
(9:00、ユースホステルにて、チェックアウト後)
10:50発のローマ行きに乗ろうと、電車を待つ。そしたら、ミラノからヴェネツィア行きの最初の電車であった日本人二人組と遭遇。あまりこの子たちとは話が盛り上がらなかったからな、と思いながらも近寄った。だって、相手も気づいてくれたから。
「よかったら一緒に乗る?」という心構えだったけど、お互いの雰囲気がそうならず、別々の乗車待ちレーンに並ぶ。
乗ろうとしたフィレンツェ→ローマ行きの電車は、大人気で全席予約。自由チケットでは座れず、廊下も満杯。乗るのをやめようかな、と迷うほど。でもやっぱり時間がもったいないから、思い切って激混みの中へ飛び込む。乗り降りするドアにバッグを挟まれかけながら、入り口の階段に座って日記を書く。途中駅で人の乗り降りに合わせて、立ったり座ったり。
でも、よかった――さっきの子たちと一緒に乗っていたら、正直気まずい時間がつらかっただろうな。
(本当は、こういう性格を変えて、誰とでも気軽に話せるように盛り上げられるようになりたいなと思っているんだけど……)
ここからの予定としては、ローマに24、25日に宿泊し、今日と明日は前に泊まったパパ・ジョルマーノに泊まろうかなと考えている。王道のパパ・ジョルマーノ。
やっぱり旅って、一人で行動しつつも、見聞きした思いを共有できる誰かがいると、ぐっと楽しさが倍増するんだよな。人付き合いが苦手でもそうだと思う。夜、一言二言でも共有し合える誰かがいてほしい。
パパ・ジョルマーノは、それができるんだよね。オーナーのおっさんや宿泊客、話しやすい世界がジョルマーノにはある。
(11:36、電車内)
12:50にテルミニ駅に到着。そのまま地下スーパーへ。水、チーズ、ヨーグルト、ラテを7,500リラで買い、パパ・ジェルマーノへ直行。
オーナーが僕のことを覚えてくれていた。「リターンしてきた!」と言ったら、快く迎えてくれた。
2泊をお願いし、荷物を置いて、再びローマの街へ繰り出す!
共和国広場近くで、チーズと昨日買ったパンを食べる。やっぱりローマは居心地が良い。ホテルに戻ると、話を聞いてくれるオヤジがいる。どこへ行けば何があるかわかる異国の都市。贅沢な旅。
お金持ちの人たちの豪遊って、こういうことなのかな。お金のかけ方がまったく違うけど、たくさんの街に行きつけの場所があり、受け入れてくれる人たちがいる。
p>まあ、それを全力で楽しむにも、キャパの広い人じゃないと楽しめないだろうな。 p>僕は、パパ・ジェルマーノがあれば、ローマがいてくれれば、それで十分かも。(1:10、共和国広場にて)
パパ・ジェルマーノ
共和国広場(ローマ国立博物館の南西のロータリー)
―― 旅する読書人より 2026.7.25
「パパ・ジェルマーノ!僕の青春。僕はここから大人になった!」
彼がそう書くとき、その言葉には誇りと感謝が混ざっている。たかが安宿かもしれない。けれど、そこは彼にとって「帰る場所」だった。覚えていてくれるオーナー、話しやすい宿泊客――そんな小さな関係性が、ローマという街を彼の「行きつけ」に変えた。
お金の豪遊ではなく、関係性の豪遊。そういう贅沢もあるのだ。


コメント