1996.12.25(水)
今日は8時前に目が覚めた。二度寝しながら、ぐだぐだ、ごろごろした。9:30に起きる。今日も雨。イタリアのクリスマスを雨で迎えた。これじゃ、どこにも行けないなあ。お店は開いていない。今日はどうしよう。残り2日。ホテルで1日待機はないよなあ。どうしようかなあ。まず、シャワーからだね。
(9:30、ホテルにて)
ベッドメイキングのおばさんがやってきた。ナターレなのに仕事をしている。そう、今日はナターレ!クリスマス!
Nさんと昨夜行ったバールへ。カプチーノとコルネット。ゆっくり朝ごはんを食べて、のんびり朝を過ごす。雨は次第に強くなる。テルミニ駅へ歩く。ナターレでも本屋は開いている。本屋で時間を潰していたら、雨が止んできた。
25日、街はお休みモード。ほとんどお店は閉まっている。バスに乗って、街中の本屋を探した。自分へのお土産として写真集を買いたいなと思って。ブラッソンとか……。
駅前以外はほとんど閉まっていた。本屋は諦めたころ、テヴェレ川が見えてきたから、という理由で下車した。

テヴェレ川、好きかも。今日は最後のローマ。雨も止んできたし、たくさん楽しもう!昼食を食べにホテルへ戻ろう!
(12:56、テヴェレ川にて)

帰りも疲れていたので、バスで共和国広場行きを待つ。なかなか来ない……待つ……。番号なしのバスが何台も通り過ぎる。バスが来た!と思ったら、レッカーされたバス(なんでバスがレッカー?)。それにしても、バスが来ない。
通りすがりのイタリア人が笑ってきた。「今日はバス来ないよ」って(ナターレはバスが来ないんだって)。
まじかー。
テヴェレ川からテルミニ駅まで歩くのー? と声に出しながら歩く。
サンタンジェロ城近くのテヴェレ川から、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂、そしてサンタ・カテリーナ教会を横目に、急カーブからの急な坂。

遠かった。
ホテルに着いた。Nさんも昼食中だった。僕のランチは、途中で買ったサンドイッチ。七面鳥とほうれん草のような青菜、チーズを挟んだ豪華なサンドイッチ。うまかった。
午後はNさんとコロッセオへ出かけた。お店が休みだから、人が集まっている。激混み。中に入れない。日本人もいっぱい。仕方なくパンテオンへ。閉まっていて中に入れない。ここも観光客であふれている。スペイン広場も一緒。いやあ、ゆっくりできるところがない。結局、ホテルに逆戻り。ちょうど良い距離の散歩。
途中、日本人旅行者のマイクロバスが通る。両手を振ってアピールするが、もちろん反応なし。なんで手を振った?今となってはわからない。それくらい疲れていた。
ホテルで、部屋のみんなで飲むことにした。1986年、10年物のワイン。うまい!……ってことだと思う。語れるほど飲み慣れていないけど、これだけは言える――楽しい。
オーナーのジーノがワイン片手に顔を出してきた。Nさんと仲の良いオーナーのジーノに、「Nさんって良い人だ!」と話したら、彼が言った。
「俺が、泊まる人をチェックしているんだ。変なやつは断っているからね」
って、絵にかいたようなウィンクをした。

こういう瞬間だよね。いちいち楽しい!って思う。
いちいち「俺、今楽しんでます!」なんて、なんちゃらボタンがあったら連射です。ロビーへ顔を出すと、ジーノが自家製ワインをもう一本くれた。
ピンポン!ピンポン!ポン!ポン!(なんちゃらボタン連射)

クリスマスをイタリアで過ごしている。必要以上に街が盛り上がる日本の異様な雰囲気とは全く違う、ローマのナターレ。どこへ行ってもクリスマスソングで街があふれている……なんてことは全くない。山下達郎の「きみはきっとこない」が来ないクリスマス。
静かな街は、今日ばかりは観光客を少しうざく感じているんじゃないかと思うくらい、そっけない。そのそっけなさが、心地よかったりする。勝手に、ローマ寄りな自分。
バックパック初心者なのに、ローマ初心者なのに、数週間いるだけで、もうかぶれている。それでもいい。もう明日で僕の旅は終わりを迎えるのだから。
日本へ帰る前に、最高に楽しいローマを過ごせた。
最高の22歳。酔っ払い。
(1:11、ホテルにて)

―― 旅する読書人より 2026.7.25
ローマのクリスマスは静かだった。店は閉まり、バスは来ない。観光客を少しうざく感じるような、そっけない街。それなのに、彼は「心地よい」と書く。
そして、ジーノのウィンク。あの「絵にかいたような」仕草が、この静かな一日に、ぽつんと温かい光を灯している。
旅の終わりが近づいている。その寂しさと、まだここにいられる嬉しさが、混ざり合っている。


コメント